ピエール・ガニェール・ア・東京

先ずは内装に鮮烈な印象を受ける。壁面はタイル張りだ。黄土色を基調色とした小さなタイルが、渦を巻くような模様を描いている。装飾過剰の一歩手前で、華やかな雰囲気の演出に成功している。ちなみに、男性用洗面所にも驚くような仕掛けが施されている。

 

コースもあるが、アラカルトを注文した。先ずは数種類のアミューズが供される。それぞれ凝った品だが、各々はごく僅かなので余り印象に残らない。ただ、全般的に甘みを積極的に使っているような感じがする。

 

前菜の『手長海老(5種の調理法)』は、文字通り以下の5種類の皿が供される。

『オリーブオイル風味のタルタル パッションフルーツシェリービネガー入りヌガティーヌを添えて』、『パセリの香るグリエ シシトウと共に』、『ターメリックを利かせたクネル ブイヨン"サンテ"』、『オレンジの香りが爽やかなポワレ 人参のエッセンスとレーズン』、『香ばしいジュレ パイナップルのキャラメリゼ

品書きが語るように、伝統や文法を無視したかのような味の要素を組み合わせている。ここでも、オレンジやパイナップルの甘みを利用して、一風変わった味を作り出している。

 

主菜は『鴨とマグロ』。想像を絶する組み合わせに興味を引かれて注文してみた。といっても、両者は一緒に調理されるのではなく、別の皿で供される。給仕は、鴨を食べる合間にマグロを食べることを推奨していた。そのマグロは、『マグロの赤身"ルージュ" シェリー酒の香るドライフィグ』というもの。生のマグロに甘いソースがかかっている。日本人的な固定観念に凝り固まっているせいか、マグロと甘みの組み合わせに違和感を覚える。鴨は『シャラン産 鴨胸肉のエギュイエット 芳醇な洋梨のブランデーの香り』に『万願寺唐辛子とブラックオリーブママレード マンゴーとクミンのソース』をかけたもの。ソースの味が、何故か味噌味に感じられた。

 

デセールは、柚子とフランボワーズのスフレ。通常のふわりとした食感のスフレと異なり、中心部はトロッとした食感だ。変な例えだが、『生乾きのスフレ』という形容詞が浮かんだ。

 

全般的に、素材や技術は確かなものなのだろうが、斬新な技巧に走りすぎという印象を受けた。

 

サービスはほぼ完璧。卓の数より給仕の数が多いくらいだが、客の行動を先読みしたサービスを供する。例えば、連れの残した皿を貰いたいと思って、近くの給仕に皿を取り替える旨を頼むと、そのことを察した別の給仕が、すかさずカトラリーを交換に来る。洗面所に立つ際の誘導も洗練されている。一つだけ気になったのは、複数の皿の一つを食べ終わった際の動作だ。空いた皿をすかさず片付けに来るのはいいとして、他の皿を食べるためにナイフとフォークを動かしている最中にも空いた皿を片付けるので、邪魔に感じることがあった。

 

二人で、ジュブレー シャンベルタンのドゥミを頼んで68,000円。

★★★・・

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