実川 真由 「受けてみたフィンランドの教育」

フィンランドが世界の学力ランキングで高い位置にいることが、数年前から日本のメディアでしばしば話題となっている。日本みたいに大学受験に向けて厳しい勉強をしているわけでもないのに、平均的な学力が高い理由が、この本を読むと良く解る。

日本との相違を強く感じさせられたのは、フィンランドでは日本のような穴埋め式の試験はほとんどなく、読書と作文とプレゼンテーションを非常に重視しているという点だ。フィンランド語では、「勉強」を意味する単語が「読む」を意味する単語と同一というのが、象徴的だ。日本の受験勉強は、問題解法の技巧に走り過ぎるあまり、思考訓練の基礎である読書と作文の量が少なくなっていると言えるだろう。

英語の教育方法も興味深い。日本の多くの学校では、文法を日本語で説明したり、英文を日本語に翻訳したりする。対するフィンランドでは、英語の授業は英語を使って行ない、英文を大量に読み書きする。また、多くの人々が子供の頃からTVで、(吹き替えでなく字幕の)英語の映画を見るので、自然と英語に慣れているのも、英語が上手い理由の一つだそうだ。

欲を言うなら、数学や自然科学の学習方法に関する記述が有れば、なお良かった。数学の試験でも作文を書かされるという記述があったが、授業の内容はほとんど書かれていない。

著者は高校生の時にフィンランドに留学し、この本の出版時(2007年)には日本の大学2年生だった女性だ。文章がいい。フィンランドへの愛情に溢れ、自然で読みやすい文章だ。

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