印象的なレストランだ。
場所は高木町の富士フィルムの近くだ。地名は西麻布だが、最寄の表参道駅からは15分程度歩く住宅地の中に佇んでいる。一戸建ての建物の地下が厨房で1階が客席という、面白い造りをしている。
メニューは、デセールを含めて10品以上となるコースのみだ。
南瓜、アオリイカ、ハッサクを2口で
左側の見た目はデセールみたいだが、味は確かにアオリイカだ。
アップルパイの様に#19~タラバ蟹、安納芋、柚子を3口で
まるで某ファストフード店のアップルパイのようなプレゼンテーション。しかし中身はタラバ蟹。熱めの生地にかぶりつく。#19というのはエディション番号だそうだ。このアップルパイはレシピを時々変更し、これがその19作目。
さよりのクリュと地蛤、滝川ごぼうのピュレ、ごまだしのエミュルションとデコポンのヴィネグレット、紫蘇の小葉とクレソンノア
さよりとクレソンという意外な組み合わせが中々美味しい。
定点~丸ごと火入れした蕪とイタリアンパセリのエミュルション、バスク黒豚のジャンボンセック&ブリオッシュ
他の食材は頻繁に変わるが、蕪は常にメニューに載っているそうだ。良い素材の蕪を、焦げ目が付くまで焼いている。
花たち~アイナメをプリッと焼いて桜の花のブールブランと、蕗の薹のピュレ、山独活、八朔の葉のオイル、白味噌のエミュルション、野生の胡椒、パンプルネル
色々な味と香りが詰め込まれた皿だ。山椒は使われていないのに、山椒のような香りがする。蕗の薹の苦味が良いアクセントとなっている。アイナメの身にもう少し弾力があれば良かった。
暖かくなってきた~フォアグラのナチュラルと新玉葱のコンフィ、マスカットベイリーA、クレソン、いしるのキャラメルとせとかの皮
本日の食材のほとんどは日本産だが、このフォアグラと後に出てくるチーズの内の一つは輸入食材だ。フォアグラに甘い果物を添える手法は良くあると思うが、ここでは微かに甘みの感じられる玉葱とクレソンという意外な食材を添えている。
右と左で~金宣烏龍茶
何の変哲も無い烏龍茶に見えるが、飲んで驚く。何と右が暖かく左が冷たい。物理的に正確な記述は僕の知識を超えているが、完全な液体でなく、やや固体に近い(?)材質だからみたいだ。良くこんなことを考え付くものだ。
最後に肉が供される前に、肉用のナイフを選べる。もちろん切れ味は同じで、好みの柄を選ぶわけだ。こんなサーヴィスは初めてだ。
寒さの下の春~石黒牧場のホロホロ鷄を炭火で、ソテーした白菜のエキスとあん肝のパテ、新筍、マッシュルームの砂
ホロホロ鶏は淡白な食材だと思っていたが、これはしっかりした味わいの肉で、ホロホロ鶏の概念が覆される。皮の焦げ目の付けかたも見事。白菜が美味しい。
厳選チーズ
このクラスの店としては標準的な水準か。
爛漫と~あたたかいショコラのタルト、マスタードのソースとクレームシャンティ、ロングビーツ、ブラッドオレンジとヴァニラアイスクリーム
ブラッドオレンジの甘酸っぱさが良い。
白米甘酒のソルベ、ハルカ、サツマイモ
最後もデセールとしては意表を突く食材だ。この日食べた皿の中では、余り印象に残らなかった。
この店の料理は、多皿で、かつ一つ一つの皿に多くの食材が使われている。奇をてらっているわけではないが、一皿毎の情報量が多いので、僕は1回の訪問ではこの店の料理を理解することは難しいと感じた。多くの皿にハーブや野草が効果的に使われているのが良い。健康的でかつ美味しいのは、現代的だ。
ワインはソムリエに頼んで、グラスで4杯選んでもらった。ホロホロ鶏にロゼを選んだのには驚いたが、意外と相性が良い。給仕達は客に常に注意を払っており、当たり前かもしれないが、料理をよく理解している。
二人でワインをグラス4杯で、48,000円。
★★★★・
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