パワー テニス

僕がテニスを見始めたのは、確か1983年頃だった。最初に好きになったのは当時全盛だったジョン マッケンローだったが、彼がビョルン ボルグを破った1980年と1981年のUSオゥプン決勝は観たことがなかった。見たいという希望が長年かなわなかったが、最近テニスのDVDを販売しているサイトを見つけ、これらの試合のDVDを購入してみた。

先ず思ったのは、プレイが遅いということ。ロジャー フェデラーやラファエル ナダルのプレイを見慣れた目からすると、ストロークもサーヴもかなり遅く感じられる。実際にボルグのファースト サーヴは時速112マイル(179km)程、マッケンローのファースト サーヴは時速110マイル(176km)弱程度と、現在の一流選手に比べて時速にして20~30km程度遅い。ボルグのストロークも弾道が弓なりで、滞空時間が長く感じられる。

ラケットが木製だったこの時期は、パワー テニスの前夜だった。カーボン ファイバー製のラケットの登場と、選手の体格の大型化により、テニスのパワーとスピードは増していく。ボルグとマッケンローは共に身長180cm。次のチャンピオンのイヴァン レンドルは187cmだ。

マッケンローがレンドルを破った1984年のUSオープン決勝も再見したが、ボルグ戦に比べて、カーボン ファイバー製のラケットを携えた両者のスピードは確実に速くなっている。そして翌年1985年の決勝では、レンドルがマッケンローを破って優勝する。改めて振り返ってみると、この年がパワー テニスへの転換点だったと言えるのではないだろうか。

現代はパワー テニスの時代と言われる。イヴァン レンドルの登場以来、ラケットの改良と選手の大型化が、このパワー テニスを産み出してきた。

1980年頃からの主要なチャンピオンの身長は以下のとおりだ。

ビョルン ボルグ:180cm

ジョン マッケンロー:180cm

イヴァン レンドル:187cm

マッツ ビランデル:182cm

ステファン エドバーグ:188cm

アンドレ アガシ:180cm

ピート サンプラス:185cm

ロジェー フェデラー:185cm

ラファエル ナダル:185cm

こうして見ると、レンドル以降のチャンピオンは180cm台半ばの身長が多い。今後も選手は更に大型化していくのだろうか?現在の有力選手には更に身長が高い人も多い。

ノヴァク ジョコヴィッチ:188cm

アンディ マレイ:190cm

ロビン ソダリング:193cm

トマス ベルディヒ:196cm

ジャンマルティン デルポトロ:198cm

こうして見ると、フェデラーナダルといった180cm台半ばの選手に対し、190cm台の選手が挑んでいるとも言える。大型選手はパワーが有るし、打点が高いため球をフラットに打てるという利点もある。しかし、体が大きすぎると、俊敏さの面で不利だ。数年後は判らないが、現在のところ、これらのバランスの面で、超大型選手は未だフェデラーナダルを凌駕するまでは至っていない。