Anh Hung Tran, Norwegian Wood (2010)
美しい映画だ。本作には、映像美に息を呑むような場面が幾つもある。
例えば、直子(菊地凛子)の部屋で、ワタナベ(松山ケンイチ)が直子の誕生日を祝う場面。外は雨が降り、部屋の照明は落とされている。しばし語り合った後、初めてお互いを求め合う二人の肌を、外からの仄暗く青い光が照らす。緊張感を孕んだ官能の色調だ。
あるいは、精神を病み施設に入院した直子を、ワタナベが見舞う場面。カメラは二人を遠景で捉える。二人の周り一面に広がる、草原の緑が何と柔らかいことか。
本作は、村上春樹の原作から、監督が必要と感じる場面のみを抽出している。そのため、原作の良さが失われてると感じる人もいるかも知れない。また、僕自身は、全体の中で性交の場面の占める割合が多すぎると感じた。
しかし、物語としては欠点があるかもしれないが、それを補って余りある映像美が深い印象を残す。
★★★★★
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