訪れたのは蒸し暑い日だった。ドレス コードが判らなかったので一応ジャケットを着ていったのだが、店内の空調の温度は高めだったし、ジャケットを着ていない男性客も多かった。ジャケットを着なくても良かったと思う。席の間隔は若干狭目だ。
渡されたメニュー(持ち帰ることができる)は、封筒の中に入っており、本日の日付が消印として押されているという趣向だ。料理は奇を衒ったものが多いかもしれないと予想していたが、実際に出てきた料理は極めて真っ当なものだった。メニューに書かれた全体のコンセプトは「日本の豊かさを器の中に…」。そして一皿毎のコンセプトも記載されている。
~始まりは様々な"感覚"から…~
季節・香り・温度・食感・そして組み合わせ
最初に出て来たのは、冷製のあわび・毛蟹・夏野菜と暖かい蛤のお出汁を組み合わせた品だ。どの素材も質が高い。
同じコンセプトの二品目は、焼きとうもろこし、生うに、三種類の葱。生うにをジュレ仕立てにするのは良くある趣向だが、とうもろこしで微かな甘みを加えている。
~湯浴み~
"温"より"熱"を馳走として…
鱧を客自らがしゃぶしゃぶとして調理する。単純な料理とも言えるが、これが一番印象に残った。出汁が素晴らしく、いくらでも飲めてしまう。
~日本近海からの便り~
海の豊かさ 潮の流れ
七種類の刺身だ。単純に切って客に醤油に付けさせるのではなく、どの刺身にも少しづつ味付けがしてある。えぼ鯛の干物は僕の好物の一つだが、えぼ鯛の刺身(写真の一番手前)は初めて食べた。
~"備長炭"~
焼きて香りし 炭火のちから…
鮎を黒焦げになるまで焼いている。焼き加減は見事だが、塩以外の何かで味付けしてあり、味付けが僕にとってはやや強すぎた。恐らく意図的に尾を曲げているのだろうが、このため若干食べにくい。
~出会い 鴨葱~
陶板御狩場焼
鴨と葱を卵ですき焼きにしている。洗練された料理が続いて来たが、ここで意表を突くような下世話な感じの品が出てきた。でも中々美味しい。
~1/100,000の奇跡 "天然大鰻"~
この「宝物」をいつまでも…
鰻の蒲焼はしばしば蒲「蒸」とでも称した方がいいような柔らかいものが有るが、ここの鰻はキチンと焼いてある。皮のカリカリとした食感が良い。
~瑞穂の国~
同釜食仲 新潟から…
ご飯と味噌汁だが、平凡な出来と感じた。
~甘美~
冷涼・温もり・遊び心・懐かしさ
そして誘惑
デザートの一皿目はマンゴー。完全に凍ったマンゴーの皮をスプーンで破った後に果肉を掛ける。食感の対比が面白い。
デザートの二皿目はわらび餅。粉の粒子が非常に小粒で、むせてしまうほど。
飲み物はワイン、日本酒、焼酎など幅広い。ワインには小瓶は無い。シャンパーニュとワインをグラスで数杯飲んだが、料理が予想以上に日本的だったので、日本酒でも良かったかもしれない。客単価が3万円台後半以上なので、頻繁には通えないのが残念だ。ミシュラン三ツ星。
★★★★・