熊本県と宮崎県

短い夏休みを取って熊本県と宮崎県に旅行してきた。去年の夏はイタリアに行ったし、その後9ヶ月程は仕事の都合で殆ど日本に居なかったので、日本での旅行は久しぶりだ。

ヒバリカフェ

JAL羽田空港から熊本空港へ飛び、レンタカーを借りる。30分ほどで阿蘇ヒバリカフェに到着し、昼食を摂る。このカフェはホットドッグで有名だそうだが、何よりのご馳走は廻りの風景だ。目の前が田んぼで、遠くに阿蘇の山々が眺められる。正に絶景。★★★★★

(ところで、阿蘇という土地にはいくつかの山々が連なっているが、阿蘇山という名前の山は無いそうだ。)

大観峰

ミルクロードという道をドライブする。辺りの草原は雄大だ。名前の通り、放牧されている牛をしばしば目にする。大観峰(だいかんぼう)という展望所からも、阿蘇の山々が眺められる。今回の旅行は天気に恵まれず、この日も曇っていたのが残念だ。

藤もと

一泊目は阿蘇の北にある黒川温泉の「藤もと」という旅館に泊まった。ここは旅館街から外れたところに佇んでいる。和風旅館だがベッド付きの部屋を選択した。料理は山菜や馬刺しや牛肉など。素朴な感じだが、中々美味しい。川辺の露天風呂が気持ちいい。二人で40,000円弱。WiFi有り。クレジット カード不可。★★★★・

米塚

二日目の午前中は阿蘇の米塚(こめづか)という場所を訪れた。椀を伏せたような不思議な形の小山だ。SF映画で宇宙船が下りてきそうな感じ。★★★・・

味工房ナウシカ

米塚近くの味工房ナウシカという店で昼食を摂る。風変わりな名称の料理が多い。シーフードとチーズを載せた熱々の「哲学者の焼きカレー」が美味しかった。★★★・・

数鹿流ケ滝(すがるがたき)

午後は草千里ヶ浜(くさせんりがはま)と中岳(なかだけ)を訪れたが、あいにくの濃霧のため、見ることは叶わなかった。早めに宿に向かうことにしたが、道中の数鹿流ケ滝(すがるがたき)に立ち寄ってみた。ここは「日本の滝百選」に選ばれているそうだが、直ぐ傍まで近寄れず、遠くから眺めるので、余り迫力を感じない。★★★・・

はなれの宿 千の森

二泊目の「はなれの宿 千の森」は、浮世離れした個性的な宿だ。阿蘇の西の方にあるが、場所はかなり判りにくい。レンタカーのGPSは正確な場所を表示せず、Googleマップを使って何とか辿り着いた。8000坪の敷地に離れが二棟だけ在る。敷地は庭というより手付かずの林という感じだ。泊まった離れは、バルコニーから小川を眺められる。

それぞれの離れに風呂と岩盤浴の設備が備わっている。風呂のガラスが曇って小川を眺められないのが残念。小川に面した側の窓が開けられれば、更に良かったと思う。

この宿は元々は料理店から始まったそうで、料理も中々のものだ。写真手前左の具をフォンデュの要領で中央の胡麻豆腐に浸けて食べる。

二人で100,000円程度。WiFi無し。★★★★・

中岳

三日目の午前中は、前日、濃霧のため断念した中岳(なかだけ)にロープウェイで登る。この日も霧が深く、一部しか見えなかった。

草千里ヶ浜(くさせんりがはま)も視界が極めて悪かった。予報では午後から晴れる可能性があったが、日程の都合上そこまで待てず、次の目的地へ向かう。

白川水源

阿蘇の東の方にある白川では、大量の水が湧き出る様を見ることができる。透明度が高い。★★★・・

高千穂峡

高千穂峡(たかちほきょう)は、天照大神(あまてらすおおみかみ)などの神話の舞台の場所だ。宮崎県の北西、熊本県との県境に在る。僕は神話には興味無いが、ここの風景は見てみたいと思った。定番のボート レンタルは人気が高く、1時間半待ちだった。待ち時間の間に、先ずは徒歩で峡谷を上から眺める。狭い谷の合間を緑色の川が流れる様は神秘的で、ここが神話の舞台となったのも頷ける。★★★★・

今度はボートに乗って、低い視線から峡谷を眺める。僕がボートを漕いだのは恐らく生まれてから2回目だ。ボートの数が多く、かつ滝を避ける必要があったので、漕ぐのに苦労した...

延岡市

三泊目の場所の選択は難しかった。延岡市には特筆すべき観光名所は無いが、後述する料理店を訪れたかったことと、旅程の都合上、ここに泊まることとした。延岡市旭化成の創業の地だったそうだが、今は同社の本社は東京に在る。市の中心部を歩いてみたが、活気が感じられない。泊まった「ルートイン延岡」は寝るだけという感じだ。

 

 

きたうら善漁。

名所の無い延岡市に泊まった目的が「きたうら善漁。」(「きたうらぜんりょうまる」と読む)。ここの料理は素晴らしかった。先ずは真鯛の刺身に唸る。10時間前から〆めたという食感が絶品だ。

宮崎県の佐土原町(さどわらちょう)で取れた佐土原茄子の椀も見事。茄子は柔らかく、上品な甘みがある。今まで食べた最良の茄子だ。

炭と藁で燻すように焼いたという鮎の焼き加減も絶妙だ。

豚肉は浅い火入れで焼いている。肉質が良くなければ不可能な芸当だ。脂身が殆ど無いのも嬉しい。

この店は延岡市の小さな繁華街の外れに在る。この立地でこんな素晴らしい料理店が成り立っているのは驚きだ。興味を持って「親方」(と周りの従業員から呼ばれていた)に話しかけてみた。

先ずは茄子の甘みの理由を訊くと、「特に...」という答えが返ってきた。この答えが余りに素っ気無いと思ったのか、親方は数秒の間の後に更に話を継いで、概ね以下のようなことを述べた。「料理の味は素材で決まる。自分の調理は、素材の良さを引き出すために必要なことしかしない」。この答えには半分謙遜が含まれているだろう。素材が良いのは勿論だが、腕が良いからこそ素材の持ち味を引き出せていると思う。あの鯛の食感は、〆めの技術あってことのものだろう。

客層に付いて訊いたら、8割は地元の人だそうだ。それも、特に宣伝をせずに、口コミで客が訪れるとのこと。支払い金額は二人で15,000円程度だった。東京ならこの3倍の値付けでも繁盛しただろう。素晴らしい料理を地元の値付けで提供しているから、地元の客で店が成り立っているという訳だ。東京に住んでいる僕にとって、延岡市は余りに遠い。果たして再訪する機会は有るだろうか?★★★★★

美々津町

四日目は延岡市から宮崎市へ向かう途中、日向市(ひゅうがし)の美々津町(みみつちょう)に立ち寄った。ここは「日本海軍発祥の地」だそうだ。と言っても、近代海軍ではなく、神武天皇の出征の神話にちなんだものだ。

これに因んで、家々の郵便受けには船の絵が描かれている。

古い町並みが残っており、散策するには良い町だ。★★★・・

宮崎市

旅行ガイドを何冊か買ってみたが、宮崎市郊外の「シーガイア」を除くと、宮崎市の中心部には名所は余り無いようだ。歩いてみても、余り印象に残らない。街路樹が椰子の木というところに、南国を感じる。宿泊したホテルは、日航系列のホテルJALシティ宮崎。

マンゴー

市内の「フルーツ大野」という店で、マンゴー アイスを頼む。行列の出来る人気店だ。

頼んだ品は普通のシャーベットだったが、「太陽のタマゴ」というブランド名のマンゴーが、2,500円/100gでメニューに載っていた。「そんなに美味しいのだろうか」と興味を抱きつつ、そこでは注文しなかった。その後、市内の山形屋という百貨店のデパ地下で、またもや「太陽のタマゴ」を見かけた。今度は2個で32,000円という驚くべき値段だった。今回も迷ったものの、結局購入には至らず。

しかし帰りの空港で再び「太陽のタマゴ」を見かけ、遂に買ってしまった。2個で17,000円。自宅に帰ってから恐る恐る食べてみたが、これが甘くて実に美味しい。今まで食べてきたマンゴーとは次元が異なる。旅の思い出に買ったようなもので、東京で再度大枚を叩いて買うかどうか判らないが、記憶に残る味だ。

やまぢ

宮崎市の夕食を何にするか事前に決めていなかった。「チキン南蛮」が名物とは聞いていたが、タルタル ソースが好きでない僕には迷いがあった。夜、繁華街を歩き、チキン南蛮で有名な某洋食店の入口まで来たものの、逡巡してしまい、最終的には「居心地屋 やまぢ」という鳥料理店に飛び込んだ。鳥のレバ刺しを食べたのは久しぶりだが、素材が新鮮で臭みが無かった。

チキン南蛮も頼んでみたが、甘い味付けで、僕の口には合わなかった。★★★・・

鬼の洗濯板

五日目は日南海岸を南下する。青島近辺の「鬼の洗濯板」は、岩が連なって洗濯板のように見える。壮大な奇観だ。★★★★・

サンメッセ日南

東京に住んでいる人なら、渋谷でイースター島のモアイ像を見たことがあるだろう。「サンメッセ日南」では復刻されたモアイ像が7体立ち並んでいる。★★★・・

鵜戸神宮

僕は神社には興味が無いが、鵜戸神宮(うどじんぐう)には景観に惹かれて立ち寄ってみた。この神社は海に面しており、建物と荒い岩の対比が面白い。★★★★・

飫肥

日南海岸から内陸へクルマで30分程の飫肥(おび)は、昔ながらの町並みが残る風情のある城下町だ。★★★・・

北郷 音色香の季 合歓のはな

最後の五泊目の宿は、北郷町という所に在る「北郷 音色香の季 合歓のはな」(きたごうねいろがのときねむのはな)。ここは素晴らしかった。

以前は宮崎市内で団体客も取るような旧式の旅館を経営していたそうだが、時代の変化に合わせて、7年前に今の地に越すと共に、洋風の趣味を取り入れた少人数客用の旅館として再出発したそうだ。立地が良い。辺り一面田んぼの中、小川に面した場所にある。それでいて宮崎空港からクルマで1時間弱なので、レンタカー前提であればアクセスも悪くない。

客室はベッドを備え、リヴィングは床をくり貫いたような造りになっており、これが和める。

客室は小川に面しており、ウッド デックから小川を眺めることが出来る。

客室毎に内風呂と露天風呂が備え付けられており、露天風呂からは小川を眺めることができる。夜、森と小川の音に耳を澄ましながら、そして朝、小川の流れる様を見ながら風呂に浸かると、時が経つのを忘れてしまう。水周りも充実して使いやすい。今回の旅行で、小川に面した風呂の有る宿3軒に泊まったが、その中で一番良かった。

前々日の「きたうら善漁。」の印象が鮮烈に残っているので、ここの夕食は分が悪くなってしまうが、それでも中々のものだ。利休饅頭は、外側は胡麻を用いた饅頭だが、中身は牛肉という変わった品。でも美味しい。



吸い物には何とライチが入っている。意外な組み合わせだが、これも良い。

南瓜蒸し。甘くてデザートとしてもいける。

最後はカラメル プリンとアイス コーヒー。

朝食は和食以外に洋食も選べる。

この宿は、内外装の趣味が良いし、小川に面したウッド デックと露天風呂で気持ちよく寛げる。WiFiが無いのが惜しいが、再訪してみたい。二人で75,000円程。★★★★★

スバル レガシー

六日目は昼に宮崎空港を発つ便だったので、どこにも寄らず、そのまま空港へ向かった。今回初めてスバルのレガシーを借りたが、ハンドリングに安定感があり、乗り心地も良く、いいクルマだと思った。パドル シフトも面白い。