2014年全米オープンはチリッチが圧倒的なパフォーマンスで初優勝

2014年全米オープン男子は、近年で最も驚くべき結果となった。今年の全豪でスタン バブリンカが優勝したのも意外だったが、マリン チリッチの全米優勝はそれを上回る驚きだ。

僕は準決勝(d. ロジャー フェデラー)と決勝(d. 錦織圭)を見たが、チリッチのプレイは凄まじかった。サーヴ、リターン、ストローク、パスの全てが完璧で、今まで見てきたあらゆる選手のあらゆるプレイの中でも最上級の出来だ。試合の最中に波が無く、最初から最後まで全開だったのにも、仰天した。

チリッチはグランド スラム優勝者としては遅咲きだ。男子の大会は、特殊な位置づけのツアー ファイナルを除くと、上からグランド スラム(4大会)、ATP 1000(旧マスターズ、9大会)、ATP 500、ATP 250という構成だ。チリッチは、今年の全米前までツアーの優勝が11回なので、そこそこ勝っているとは言えるが、優勝した大会は全てATP 250だ。ATP 500や1000の優勝が無く、25歳でいきなりグランド スラムで優勝してしまった。2000年代に入って、グランド スラム初優勝時に25歳以上だった他の選手には、ゴラン イヴァニセヴィッチ、トマス ヨハンソン、アルベルト コスタ、ガストン ガウディオ、アンディ マレイ、スタン バブリンカが居る。この内マレイ以外は、初の優勝が最後の優勝と成ってしまった(バブリンカはまだ可能性があるが)。

 

GS大会

選手

優勝時の年齢

他のGS優勝

2001

ウィンブルドン

イヴァニセヴィッチ

29歳

無し

2002

全豪

ヨハンソン

26歳

無し

2002

RG(全仏)

コスタ

26歳

無し

2004

RG(全仏)

ガウディオ

25歳

無し

2012

全米

マレイ

25歳

2013年
ウィンブルドン

2013

全豪

バブリンカ

28歳

無し

 

 

チリッチは去年、同じクロアチア出身のイヴァニセヴィッチをコーチとして迎え入れた。このコンビは、果たしてグランド スラムの再度の優勝を遂げられるだろうか。

錦織が準決勝でノヴァク ジョコヴィッチを破って決勝に進出したのも快挙だ。去年までの錦織は、技術は優れていたものの、身体能力の面で世界のトップに若干及んでいなかった。しかし、今年はサーヴの速度も増し、また全米では2試合連続でフル セットで勝利した。年初の全豪でラファエル ナダルと対戦したときは、善戦したものの重要なポイントでエラーを連発して、勝負強さに欠けると感じさせた。しかし全米のジョコヴィッチ戦では、第2セットを簡単に落とした以外は、競った場面でも確実に得点を重ねた。まだ若いので、日々進化しているのだろう。グランド スラムの優勝やランキング1位の可能性も出てきた。

世代の話をすると、現在の男子テニス界は、28歳のナダルと27歳のジョコヴィッチを、23~24歳の錦織とグリゴー ディミトロフとミロス ラオニッチが追う構図となっているが、ここにチリッチが割り込んできた。過去数年間続いてきたナダルとジョコヴィッチの圧倒的な地位が揺らぎ始めている。

フェデラー ファンとしては、フェデラーがチリッチに完敗したのは残念だが、これだけチリッチが良ければ、仕方が無い。フェデラーは今年のハレ以降、とても良いプレイをしている。来年グランド スラムで優勝する力は十分有ると思う。