妖しい煌き - 曜変天目茶碗

曜変天目(ようへんてんもく)茶碗を目当てに,世田谷区の静嘉堂文庫美術館を訪ねた。曜変天目茶碗とは,中国宋時代の陶磁器の一種で,世界に3点しか現存せず,その全てが静嘉堂文庫美術館を含めて日本にあるそうだ。「曜変」とは元来「窯変」「容変」を意味し、窯の中の偶然の変化、窯変(ようへん)により,釉面に美しく輝く斑紋が現れたものを言う。

 

この時期,静嘉堂文庫美術館では「三菱・岩崎家の茶道具 -父子二代蒐集の至宝-」という特別展を開催しているが,そこに並べられた茶道具のほとんどは,侘びや寂を感じさせるものである。それらのものと比べると,光沢を放つ曜変天目茶碗には,異質の存在感がある。見る位置により微妙に姿を変えるその煌きは,華美になる一歩手前で踏みとどまっているような不思議で妖しい感覚のものだ。曜変天目を現代に蘇らせることに取り付かれている人がいる,というのも納得できる魅力を備えている。

 

静嘉堂文庫美術館で驚いたのが,曜変天目茶碗の展示方法だ。普通美術品は日の光に当てないが,ここでは曜変天目茶碗を日の当たるところに展示している。晩秋の弱い日差しは,その煌きを引き出すのに最適だ。いろいろな角度から眺めて,魅せられてしまった。