クリスタル ケイ公演

1年半ほど前だろうか,何気なくつけていたMTVで"Boyfriend Part 2"のビデオに鮮烈な印象を受けてから,クリスタル ケイは最もお気に入りのミュージシャンの一人となった。普段コンサートにはほとんど行かない僕だが,クリスタル ケイは是非生で見てみたいと思い,昨日(12月25日)パシフィコ横浜まで足を運んだ。

 

クルマで行ったのだが,クリスマスのせいか,「みなとみらい」で高速を降りてから酷い渋滞で,最初の2-3曲を見損なってしまった。その不愉快な気持ちも,数曲聴くうちにすっかり癒されてしまった。

 

しなやかで躍動感のある歌唱と演奏。クリスタル ケイは声域が狭く,低い声が弱い。しかしそれでも魅了されるのは何故だろう?その一因は,中域から高域にかけての,繊細で微かに甘い声質にあるが,もう一つの要因は抜群のリズム感だろう。英語は無論のこと,日本語でもR&Bやヒップホップのリズムに完璧に乗っている。

 

話は横道にそれるが,一昔前の日本のミュージシャン達(例えばサザン オール スターズ)は,憧れの「洋楽」を物にしようと奮戦しても結局物にできず,その音楽は洋楽が「邦楽」化されたものにとどまった - そのキッチュな感覚が魅力と言えるかも知れないが。しかし,クリスタル ケイには,もはや「洋楽」 - 「邦楽」といった区分は無意味だ。音楽にこういう言葉を使うのは不適切かもしれないが,音楽も「進化」していると感じてしまう。

 

話を元に戻すと,初期の曲も何曲か演奏していたが,"Chewing Gum Baby"のように当初は稚拙な感じだった曲も,見違えるほど良くなっている。デビューして5年経ったそうだが,脂の乗った時期に差し掛かっているのではないか。これで未だ18歳とは驚きだ。

 

歌唱や演奏も良かったが,演出も斬新だった。舞台にの奥には大きな箱が6個ある。そのうちの5個は中に何が入っているのかわからない。1個だけは中が見え,そこではDJがターン テーブルを操作している。このような状況で数曲経過し,僕は「DJ以外は事前に録音した音を使っているのだろう」と思うようになった。ところが,ある時,残りの箱の中も見えるようになると,各々の箱に一人ずつミュージシャンが入っていたのだ!この箱の状態(前面が開いて中のミュージシャンが見える)が最後まで続いたのだが,単にトリック的な面白さだけではなく,バック ミュージシャンの見せ方としても大変よく考えられているものだ。クリスタル ケイのようなソロ ミュージシャンの場合,バック ミュージシャンには匿名性が求められるが,バック ミュージシャンが舞台の奥で単に控えめにしているだけでは,視覚的に面白くない。バック ミュージシャンを舞台の奥の箱に入れることによって,匿名性と視覚的な面白さを両立させている。

 

アンコールの最後は"I Like It"と"Boyfriend Part 2"。永遠に続いて欲しいと思われるような至福の一時が終わり,僕は深い満足に包まれた。

★★★★★