ザ セル

ターセム シン 「ザ セル」

 

何年か前に話題となったが見損なってしまった、Tarsem Singh, The Cellをレンタルで観た。

 

これは、異様な潜在意識を鮮烈に視覚化した、異色のスリラーだ。

 

特殊な装置を使って人間の潜在意識に入り込む技術を研究している医療機関に、FBIから捜査への協力の依頼が来た。犯人の男Carl Rudolph Stargher (Vincent D'Onofrio)は、女性を狙う連続猟奇殺人犯で、新しい被害者をどこかの独房(cell)に監禁している。FBIは犯人を逮捕したものの、病気の発作で昏睡状態となった犯人から被害者の居場所を聞きだすことができない。医療機関の職員Catherine Deane (Jennifer Lopez)は、犯人の潜在意識に入り込む。そこで見たのは、幼児期に父親から虐待された体験と、歪んだ精神から生ずる、女性に対する異常な殺意だった…

 

この映画では、現実の捜査と、視覚化された犯人の潜在意識とが、同時進行しながら交互に描写される。犯人の潜在意識も、現実的な場面と超現実的な場面が融合している。その潜在意識の映像には、時にはグロテスクな場面もあるが、一種異様な美しさがあり、この映像美がこの映画の最大の特徴だ。一方、現実の捜査の描写は、かなり陳腐と言わざるを得ない。物語性の凡庸さに眼をつぶって、映像美を楽しむのが、この映画の見方だ。

★★★★・