Ray

Taylor Hackford, Ray (2004) 

話題の映画"Ray"を日比谷で観てきた。

この映画は、ソウル シンガー、レイ チャールズの人生の中でも、特に成功を掴むまでの前半生に焦点を当てている。

黒人差別が今よりはるかに強い時代に、黒人しかも盲目の人間が音楽で生計を立てるためには、大変な苦労を強いられることになる。しかし、この映画はチャールズの人生を美談に仕立て上げるのではなく、その暗部も容赦なく暴く。女癖の悪さ-妻子がいながら、バンドの女性バック シンガーを愛人にし、子供まで生ませてしまう-や長年のヘロイン中毒は、チャールズの幸福な生活に暗い影を落とす。金にも厳しく、自分を売り出してくれたアトランティックから、より良い条件を提示したABCに移籍してしまう。

また、幼い頃に弟が溺死するのを見殺しにしてしまった経験が、終生忘れることのできないトラウマとなった、というのも興味深い。随所に現れるこの場面のフラッシュバックは、非常に印象的で、観客も胸を締め付けられる。

偉大な才能の光と影を余すところ無く描き出す脚本と映像は見事だ。また、チャールズを演じるJamie Foxxの演技も、驚くべき出来だ。単に本人に似ているだけでなく、盲人特有の身のこなしや、チャールズの感情の揺れを完璧に演じている。

音楽も魅力的。チャールズが演奏や歌声はチャールズ自身のものだが、それらが素晴らしいだけでなく、生演奏の臨場感を余すところ無く伝える映像も見事。

脚本、映像、演技の全てが極めて高い水準にある映画だ。

★★★★★