「日本画」から/「日本画」へ

『岩絵具や膠(にかわ)を使って描くのが「日本画」なのか? 明治時代に生まれた「日本画」という概念に果たして意味があるのか?(中略)そして現在、現代美術―日本画、洋画―日本画という対立的な考え方を崩すような新たな世代が現れ、「日本画」という定義そのものに、もはや意味がなくなってしまったようです。』―東京都現代美術館の『「日本画」から/「日本画」へ』という企画展の案内文である。

 

取り上げられている6人の画家の作風は様々だが、共通するのは、日本画出身ながら現在の作風は花鳥風月の雅からかけ離れているという点だ。特に気に入ったのは、松井冬子と町田久美。

 

掛け軸に描かれた松井の画は、日本画的と言えるかも知れない。松井の描く、まるで幽霊のようにやせ細った夜盲症の女や無表情な犬は、おどろおどろしいながらも、静謐な美しさを湛えている。

 

町田の画は、素材はともかく、表現はいわゆる日本画とはかけ離れている。単純な線と最小限の色彩で描かれた、無表情でデフォルメされた人物―中には畸形な者もいる。不気味な不安感を掻き立てながらも、不思議と印象に残る作品群だ。