ロジャー フェデラー、生涯グランド スラム達成

優勝が決まった瞬間、膝から崩れ落ちた。国歌を聞きながら涙を流した。ロジャー フェデラーがローラン ギャロスで初優勝し、生涯グランド スラムを達成した。そして、フェデラーのグランド スラム優勝回数は、ピート サンプラスと並ぶ史上1位タイの14回となった。歴史に残る王者の感激は、フェデラー ファンの感激でもある。

ここまでの道のりは険しいものだった。

去年のウィンブルドン決勝で歴史的な接戦の末、ラファエル ナダルに敗れた後、しばらくフェデラーは低迷が続いた。USオープンでは見事に優勝したものの、去年の後半から今年前半まで中々勝てない状態が続いてきた。全豪オープンの決勝で、またもやナダルにフルセットで負けて表彰式で泣き出したフェデラーを見た時には、このままフェデラーのキャリアは終わってしまうのではないか、とすら思えた。しかしフェデラーは終わっていなかった。

勝利から遠ざかり、結婚式を挙げるという状況でも、フェデラーは勝利への意欲を維持し続け、ローラン ギャロスの直前、マドリードのクレイ コートで久し振りにナダルを破って優勝するまで調子を上げてきた。

いい感じで臨んだローラン ギャロスでは、ラファエル ナダルがなんと4回戦でロビン ソダリングに負けしまう。思わぬ好機を得たものの、フェデラーには苦戦が続く。僕は準決勝のデルポトル戦から見だしたが、この試合でも、フェデラーは途中までほとんど負けかけていた。逆転できたのは、20歳のデルポトロが中盤から疲労のため動きが鈍くなったのに対し、27歳のフェデラーは最後まで動きが変わらなかったからだ。ナダルと比較すると余り目立たないが、フェデラーの体力も相当なものだ。ローラン ギャロスに備えて徹底的に練習してきたというのは伊達ではない。

ソダリングとの決勝戦では、フェデラーの神髄が遺憾なく発揮された。バックハンド ストロークが時折短くなるのは、相変わらずだ。しかし、サーブとフォアハンド ストロークの調子は最高だった。第1セットは完璧としか言いようがない。第2セットのタイ ブレイクでサービス エイスを連発する様には度肝を抜かれた。

この勝利で、メディアでもフェデラーを史上最高の選手と扱う声が高くなってきたようだ。この調子を維持できれば、グランド スラムで更に勝利を収めることができるだろう。次はウィンブルドンだ。