ロッド レイヴァー

僕がテニスを見始めたのはジョン マッケンローが全盛だった1983年頃で、それ以前のテニスはよく知らない。1960年代に年間グランド スラムを2回達成した伝説的な選手ロッド レイヴァーについても、名前だけしか知らなかったが、最近たまに利用しているテニスのDVD販売サイトで彼の試合を見つけ、テニス史の勉強のつもりで注文してみた。

僕が見たのは、レイヴァーが2度目の年間グランド スラムを達成した1969年のウィンブルドン決勝で、相手はこれまた名選手のジョン ニューカムだ。そのプレイの内容は現代テニスとは趣の異なるものだった。

二人とも、現代では消滅しつつあるサーヴ&ヴォレーでプレイを進める(セカンドサーヴでも)。また、ボールの速度やパワーは、現代ほどではない。この大きな理由は木製で面積の小さなラケットだが、もう一つの理由は選手の体格だろう。レイヴァーは身長173cmと小柄で、ニューカムは長身(183cm)だが筋肉質ではない。

レイヴァーはパワーは無いが、動きが俊敏でヴォレーが巧い。マッケンローによく似ている(歴史の順番を考えれば、マッケンローがレイヴァーに似ていると言うべきだが)。恐らくテニスは、マッケンローの時代まで何十年も同じような感じだったのだろう。テニスが大きく変わり始めるのは、マッケンローの後のイワン レンドルの時代からだ。ラケットとストリングズの進化と体格の向上が、パワー テニスを推し進めていった。現在は、強打なしに繊細な技巧のみで勝つことは、ほとんど不可能となってしまった。

話をレイヴァー対ニューコムの試合に戻して、いくつか気付いた小ネタを記す。

この二人のサーヴの間隔は現代に比べてかなり短い。彼らはボール ボーイに渡されたボールを選り好みしないし、サーブ前にボールを地面に突く回数は、せいぜい1, 2回だ。これは現代の選手も見習って欲しい。

表彰式でトロフィーを受け取る順番は、先ず優勝者(レイヴァー)、次いで準優勝者(ニューコム)だった。現代とは順番が逆だ。いつから変わったのだろう?

最後に、線審の男性が黒いスーツ姿で、山高帽を被っていたのが可笑しかった。牧歌的な時代だったのだな。