クレイでのラファエル ナダルの強さは信じられない。8回目の優勝を飾った今年のロラン ギャロス(全仏)では、準決勝でナダルとノヴァク ジョコヴィッチが当たり、これが事実上の決勝戦となった。ダヴィド フェレールとの決勝は付け足しのようなものだ。
ジョコヴィッチは2011年にマドリードとローマでナダルに勝っている。今年は遂にモンテカルロでもナダルの9連覇を止めたので、ロラン ギャロスでもジョコヴィッチが有利と僕は思っていた。第4セットを取ったジョコヴィッチが第5セットの序盤でもナダルのサーヴをブレイクし、そのまま勝ちそうな雰囲気も漂ってきたが、そこからのナダルの粘りが尋常でない。ナダルのストロークが益々冴え渡る一方で、ジョコヴィッチの精度が少しずつ落ちていく。最後はプレッシャに負けたのか、ジョコヴィッチが簡単なエラーを連発し、第5セット2回目のブレイクを許してしまった。
ナダルは全てのグランド スラムで優勝しているが、クレイでの強さは一層際立っている。体力や足の速さや精神力など、ナダルの長所は沢山あるが、これらが重要なのはクレイに限ったことではない。クレイでは、ナダルのトップスピンが大きな武器となっている。ナダルのストロークは、速く、深く、そして強烈なトップスピンがかかっている。1分間のボールの平均回転数は、フェデラーが2700回転なのに対し、ナダルは3200回転だそうだ。ボールが弾み易いクレイ コートでは、ナダルのストロークは、バウンドしてから一層高く跳ね上がる。
また、あまり語られないことだが、サーヴもナダルの大きな武器だ。ナダルのサーヴはあまり速くないが、これも強力なスピンが掛かっており、入る確率が高く、またバウンドしてから高く跳ねる。ナダルのプレイ スタイルはクレイに最適だ。
頭の辺りまで跳ねてくるナダルの球を打ち返すのは大変だ。ロジャー フェデラーは、フォアハンドならナダルの球に対応できるが、片手打ちのバックハンドでは高い球を苦手としている。バックハンドが両手打ちのジョコヴィッチは、バックハンドでもナダルの球に対応できるので、クレイでもナダルとほぼ互角に戦えるのだろう。
ロラン ギャロスでナダルはどこまで勝ち続けるのだろうか。懸念は健康面だろう。ナダルは膝の怪我が多い選手であり、また、現在27歳のナダルがあのような体を酷使する打ち方を今後何年間も続けられるのか、若干の疑問はある。大きな怪我がなければ10勝しても不思議でない雰囲気だが、こればかりは判らない。
ジョコヴィッチも益々ナダルにとって脅威となっていくだろう。去年のロラン ギャロス決勝ではナダルが3-1で勝ったが、今年はフルセットにもつれ込んだ。差は着実に縮まりつつある。
ともあれ、ナダルが史上最高のクレイ コート選手であることは間違いない。クレイ コートでの成績では、ビョルン ボルグをも圧倒している。
優勝回数 |
ボルグ |
|
ロラン ギャロス |
8 |
6 |
ローマ |
7 |
2 |
8 |
3 |
また、全てのサーフェスで見ても、ナダルは現在グランド スラムで12勝している。ピート サンプラスの14勝は射程圏内だ。ロジャー フェデラーの17勝を超える可能性もある。ナダル、恐るべし...