Manresa

印象に残るレストランだ。

所在地はSan Jose郊外のLos Gatosという高級住宅街だ。ここのダウンタウンは品の良い雰囲気だが、かと言って高級レストランが在りそうな感じでは無い。そんなダウンタウンから道一本奥に入ったところに、Manresaはひっそり佇んでいる。木造住宅を思わせる外観は素朴な感じで、室内にも華美なところはないが、落ち着いた中にも洗練された雰囲気に好感を抱く。

 

クルマで来たのでワインは飲めず、代わりにFieldnotesというノン アルコール カクテルを頼んだのだが、これが出色の出来だ。Sorrelという植物とレモン グラスとライムとセロリという原料からは、どんな味か全く想像できなかったし、味をここに記す筆力もない。ライムの甘みや酸味と共に、セロリの苦味も微かに漂う。これらの相性が良いとは驚きだ。料理への期待が高まる。

僕は少量多皿の料理が好きとは限らないが、ここのは気に入った。3皿目のオリーヴ オイルをかけたアイス クリームは、デセールとして出てきても違和感はないが、食事としても立派に成り立つ。

鮑と牛乳のパンナ コッタ(Abalone and local milk panna cotta)は、鮑の身と鮑から作ったゼリーと牛乳から泡立てたクリームの食感の組み合わせが見事だ。

サケとイクラの刺身(Cherry Salmon and its roe, fennel)は、和食の水準では普通だが、フェネルでアクセントを付けているのが面白い。

アスパラガス(Asparagas with a noriande)は単に焼いただけとも言えるが、質も焼き加減も素晴らしい。

野菜のサラダ(Into the vegetable garden...)は、素材の質がとても高い。皿には人の手が描かれており、人が野菜を差し出しているように見えるという趣向だ。僕の感覚では、少し気持ちが悪い...

塩焼きにした鯖と、カリカリに焼いたサツマイモ(Sweet potato and spanish mackerel, apple aioli)は、意外な組み合わせが面白いが、和食を食べ慣れた身からすると、鯖の火の通し方がやや浅い感じがする。

人参の料理(Carrot and onion with candied olive)は、茹でた人参の周りに、燻製にしてパリパリの人参を配し、食感の違いを楽しませる。

鱈(Black cod 'demi-sel' with fava bean)は余り好きな食材ではないが、ここのは素材が良く、また浅めの火の通し方により、弾力感が引き立つ。

主菜の最後の羊(Spring lamb, chickpeas and charmomile)は、肉の微かな臭みを、豆がうまく消している。

デセールは3種類出てきたが、印象的だったのは、ルバーブを泡状にし、中にアイス クリームを配したもの(Rhubarb compote with elderflower)。通常デセールに使わない食材だが、これが美味しいのだから驚きだ。

エスプレッソは無いが、コーヒーが3種類から選べるというのは、シェフの拘りか。

多皿のコース料理だと、全てが好みに合うとは限らない。また、焼き魚は和食の方が美味しいし、肉料理が一皿しか無かったのが、若干不満ではある。でも、細かい不満を忘れさせる魅力がこの店には有る。野菜の料理が極めて美味しい。魚や肉が主体の皿でも、野菜を効果的に添えているのが良い。美味しく、かつ健康的だ。

付かず離れずの給仕の対応も洗練されている。アメリカのレストランの給仕は、やたらと元気良く"How are you doing?"とか"Is everything good?"とか言う人が多いが、ここのは給仕達は無駄口を叩かず、でも的確にサービスを提供してくれる。

ワイン無しでも客単価は200ドル後半となり、ワインを頼めば更に高くなってしまうが、機会が有れば再訪してみたい店だ。ミシュラン二つ星。

★★★★・

www.manresarestaurant.com