ナダルがロラン ギャロス9回目の優勝

2014年決勝でノヴァク ジョコヴィッチを破って9回目の優勝を成し遂げたラファエル ナダルは、テニスの常識を超越した存在だ。ビョルン ボルグの優勝回数が6回だから、9回という優勝回数も信じ難いが、優勝に至る過程も驚くべきものだった。

今年のナダルは不調と言われていた。直前のクレイの大会では、モンテカルロフェレールに敗れ、バルセロナでは何とアルマグロに敗れてしまう。マドリッドでは決勝で錦織に勝って優勝したが、これは錦織が怪我をして途中棄権したからであり、序盤は錦織に圧倒されていた。そしてローマではジョコビッチの速攻に屈してしまう。僕はロラン ギャロスが始まる前は、今度こそはジョコヴィッチが優勝すると思っていた。

しかしナダルは、ロラン ギャロスが始まってから徐々に調子を上げて行った。圧巻だったのはマレイとの準決勝だ。マレイはローマでナダルに善戦したが、ナダルは強烈な逆クロスでそのマレイに全くテニスをさせなかった。

今までもナダルは、前哨戦やロラン ギャロスの序盤は不調でも、決勝に向けて調子を上げて行ったことが何回かあった。一番重要な試合に向けて自分を最高の状態に持っていく。誰もがそれを目指しているのだろうが、それが最も完璧にできるのがナダルだ。

話をジョコヴィッチに移すと、ジョコヴィッチは、勝てる可能性が有ったのに、またしても勝てなかった。去年の準決勝でも似たような場面が有ったが、蒸し暑い状況の中でジョコヴィッチは中盤に動きが鈍ってしまった。胃液を戻してしまうという場面すらあった。ナダルも珍しく疲れた表情を見せたが、最後まで持ちこたえた。決勝の明暗を分けた最大の要因はフィジカルの差だろう。ジョコヴィッチは引き続きナダルに勝つ最有力候補だが、フィジカルの差を詰めなければいけない。