Floraison(フロレゾン)は気軽な店だが、かなり高い水準の料理を供し、満足度が高い。
場所は神楽坂。4卓の小さな店を、調理三人、接客一人で回している。内装はコンクリートの壁に木をあしらい、簡素ながら品がある。最新のミシュランで一つ星を獲得したためか、土曜日の夜は数週間先まで予約が入っていた。コースだが前菜と主菜にいくつか選択肢が有り、アラカルトに近い。
前菜として選んだ牡蠣が素晴らしかった。牡蠣の上にジュレ、下にクリーム ソースが敷かれ、多彩な食感が楽しめる。牡蠣は微かに茹でて、半生の味わい。ジュレは海苔などを混ぜ込み、微かな磯の香りがする。クリーム ソースにはエシャロットの他にレモンも使われ、その酸味と牡蠣の組み合わせが絶妙だ。
温前菜は帆立貝や北寄貝のヴルーテ。ヴルーテの滑らかな食感と、北寄貝の弾力の対比が印象的だ。
本日の魚は平目。皮に微かな焦げ目を付けた焼き方も、皮から作ったというソースもとても良い。
シャラン産の鴨胸肉は、肉質も中心がピンクの焼き方も見事だ。適度に濃厚なソースが味に深みを与えている。
小さな店ながらパティシエが居り、デセールは出色だった。アーモンドのシブーストと金柑の組み合わせ。シブーストの焦げ目を付けた焼き方が見事だ。金柑は甘味と酸味の絶妙なバランス。金柑から作ったソルベも添えられ、温かいシブーストと冷たいソルベの温度の対比も印象的だ。
オーナー ソムリエのペアリングも良かった。
料理は古典を基にしながらも現代的な軽さがある。調理の技量が高く、食感が良く考えられている。手頃な値段ながら、高級店並みの料理を楽しめる。再訪したい。
9/10