レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ

青山の一等地に構える店は、ガラスを多用した現代的な外観。内装は焦げ茶の木と白い漆喰を基調とし、磨りガラスを配した、これまた禁欲的で現代的な感じ。内外装を見ただけでは「デザイナー レストラン」という感じもするが、料理は実に真っ当だ。

アラカルトも選べるが、コースの完成度が高そうだったので、コース(一人21,000円)を選択した。3月のコースは『芽吹き雪解け』と題されている。コースの各皿に合わせて異なるグラス ワインを供するサービスが有ったので、ちょっと値段が張る(15,750円)が頼んでみた。

『フランス・ランド地方のホワイトアスパラのグラティネ』の白アスパラガスは、堅すぎず柔らかすぎず、程良い歯応え。卵黄とバターを使ったと思われるソースは、軽く泡立ててあり、アスパラガスとの絶妙の相性を見せる。

『春キャベツ・リードポーク、タマネギのエッセンス・花びら』は、豚の胸腺のネットリとした味わいが印象的。

『天然トラフグの白子、翡翠仕立て』は、トラフグの白子を茶碗蒸しの様に仕立ててある。その上に被さっている緑色(翡翠)の層は、エンドウで作ったもの。味も見た目も爽やかだ。

『甘ダイ・活ラングスティーヌ、フキノトウ・蕎麦の実』は、甘ダイのポワレの仕方も良いが、オリーブや魚の出汁を使ったと思われるスープも上品な味わい。フキノトウの苦みがいいアクセントとなっている。

『フランス・ヴェルゴー家のシャラン鴨』は、かなりレアな焼き加減だ。火の通し方がこれ以上浅いと生臭くなってしまいかねないギリギリの焼き加減で、肉の旨みを引き出している。これを塩またはバルサミコ系のソースにつけて食べる。単に焼いただけとも言える料理だが、素材の質の高さと的確な火入れで勝負している。

コースにフロマージュが組み込まれている(オプションではなく)のは珍しい。ブリーとソーテルヌの組み合わせに陶然とする。

デセールの『イチゴ・スミレ』は、中央のゼリーの内側に食用スミレが閉じこめられているという可愛らしい演出だ。その周りには、単に半身に切っただけの苺がいくつかおいてある。と思いきや、実は下半分は苺のムースであった。エスプリが効いている。

全般的に『芽吹き雪解け』という題にふさわしく、旬の野菜を上手に使って季節感を出している。素材の組み合わせ方やプレゼンテーションが巧いが、奇を衒わずに正攻法の料理をしているのに感銘を受ける。

サービスの素晴らしさも特筆ものだ。予約の際の対応も的確で、苦手な素材や、何かの記念日かどうか確認する。主に対応してくれた給仕も、人柄の良さが自然に滲み出てきており、好感を抱く。お手洗いに立つ際の誘導や、同伴者と皿を交換する際の対応も文句なし。

二人で68,000円と、頻繁に通えない値段だが、何かの記念日の折には是非再訪したい。満足。

★★★★★